人は春を待つ。だからこそ厳しい冬が越せるのである。しかし春はためらいながら近づいてくる。その春の訪れを知らせてくれる花が桜である。
そして我々は桜前線の上昇や各地の開花状況によってその春を実感している。
このような桜前線や開花状況をテレビや新聞が採りあげ、さらに駅の掲示板に表示される国は、日本しかない。花便りは、優雅で美しい日本の文化なのである。
桜は「サ・クラ」の意で「サ」は田の神様、「クラ」は神様の坐す所、神座の意である。
従って、「サ・クラ」は、春に田の神様が山から里に降りてくる時に、その依り代となる常緑や花の咲く木のことを言い、その代表が「桜の木=サ・クラ」なのである。
さらに我々は「サ・クラ」の木に降りたった神様を料理とお酒でもてなした。そして我々もまた、神様が召し上がられたものを頂くことによって神様との結び付きを深め、神様の力を分けてもらい、その加護を望んだ。直会(なおらい)である。そしてこの習俗こそ「花見」の本来の姿なのである。
花見は花を見るだけでも素晴らしいが、それに飲食が伴うと、より一層楽しいものになる。そしてこれは日本だけの習俗でもある。そのため外国人は、日本人が花見と称して酒ばかり飲んで騒いでいると勘違いしているようである。しかし我々日本人にとって、花見は、古き時代から神と共に歩んできた宗教行事であり、何時までも残しておきたい神事なのである。花見とは、なんと優雅で楽しい習俗ではなかろうか。そして我々は毎年その花見を楽しんでいる。
今年も神と共にお酒を飲み、神との結びつきを深め、古き優雅な神事を守っていきたい。そのため今年はどこで花見をしようか。
静かに鑑賞するなら天野山金剛寺や観心寺に河合寺、いやそれとも酒盛りするなら長野公園や寺池が良い。そしてゆっくりと散策しながら花を愛でるなら、やはり奥河内の花樹と花園の道、いやいや近くの公園も捨てがたい魅力がある。
さあー、何処が良い。楽しみ方はいろいろある。
(杉岡 清和)