さざれ石は、「細石」と記され「小さい石」の意であるが、炭酸カルシウム(石灰石)が接着剤の役目を果たし、小石どうしがくっ付いて一つの大きな岩の塊となったものである。
大きな岩が砕けて小さな石となり、川を下って砂になっていく。石は、大きなものから小さいものへと変化していく。これが一般的な考え方である。
しかし日本では、石は生き物と同じく大きな巌へと成長していくと考えていた。「さざれ石の巌となりて」である。
このさざれ石は、河内長野市の天見の蟹井神社から十字峠へ向かう道中の石垣に多数組み込まれている。また滝畑から岩湧山への縦走路でも大小さまざまなさざれ石が見られる。
昨年、訪れた恩地のお寺の境内に、このさざれ石があった。住職夫人は「この石は、子供が生まれる縁起の良い石」と言っておられたが、大きな石から小さな石が剥離する様子をそのように表現されたのである。全国的にも、この石を「子持ち石」とか「赤子石」「子生石(こうみいし)」と称して祀る信仰があり、さざれ石は「神霊の宿る石」として崇められてきた。その貴重なさざれ石の原産地が河内長野市の「滝畑と天見」なのである。
(横山 豊)