河内長野の三角点あれこれ【河内長野 こんなオモロイとこ!!】

 若い頃、雪の剣岳に登った。頂上から降りる時、上を見ると友達の靴底が見えるほどの急勾配で少し恐怖を覚えたが、その後長次郎の雪渓を下り、ベースを張っていた立山の雷鳥沢に戻ってきた。
それから数年後、新田次郎の『剣岳 点の記』を読んだが、この時「点の記」なる言葉を初めて知った。

 三角点には、等級に関係なく「点の記」がある。人間でいう戸籍謄本のようなもので所在地やその土地の所有者、選点年や設置年などが書かれている。そして三角点には「点名」が付けられるが、命名者は“その土地を代表する地名”を付けるのが習わしのようである。このように点の記とは、三角点設置の記録なのである。
 

三角測量による地図作りの基準となる三角点には、1等から4等まで4種類あり、設置された初期の頃には、山の頂上や見晴らしの良さで設置場所が決められたようである。三角点は、緯度や経度、標高などの基準になる点であるが、電子基準点や水準点と比べると、見る機会も多く最も馴染みがある。

 三角点は、全国で約11万ヶ所に設置されているが、そのうち一等三角点は、全国に975ヶ所、大阪府下では、4ヶ所しかない。三角点間の間隔も1等三角点の45Kmから4等三角点の2Kmまであり、またその標柱の寸法もその等級により18cmから12cmまである。
なお三角点には、次のようなことが刻まれている。
(上面)十、 (東面)(無刻印)、 (西面)○○等(横書き)、三角点(縦書き)、 
(南面)国土地理院、 (北面)識別番号
 そして興味深いことは、いずれの標柱でも四方は、保護石で囲まれていることである。

 大阪府下での一等三角点は、次の4ヶ所であるが、残念ながら河内長野には、一つも設けられていない。
点名:葛城山  山名:葛城山 (岸和田市) 標高:865.6m
点名:泉原山  山名:石堂ヶ岡(茨木市)  標高:680.1m
点名:俎石山  山名:俎(まないた)石山(いしやま)(泉南群岬町)
                      標高:419.8m
点名:大浜公園 山名:蘇鉄山 (堺市)   標高:6.96m

 それでは河内長野市内の三角点(基準点名、山名、標高)をみてみよう。
(二等三角点) 岩湧山(岩湧山)  (標高897.7m)
        石見川(タンボ山) (標高763.1m)
(三等三角点) 加賀田(根古峰)  (標高749.4m)
        一徳防(一徳防山) (標高544.1m)
        川上(田山)    (標高541.7m)
        唐久谷(学文峰)  (標高414.4m)
        天野山(天野山)  (標高272.0m)
        鬼住(鬼住)    (標高255.05m)
(四等三角点) 灰原池(灰原池)  (標高119.6m)
        古野(古野)    (標高117.6m)
        烏帽子形(喜多町) (標高152.4m)
        北青葉(北青葉台) (標高166.9m)
        清見(清見台第一公園)(標高230.8m)
        鳩原(鳩原)    (標高296.7m)

 ところで岩湧山は、大阪府下では一等三角点のあるどの山よりも高いが、一等ではないし、あの富士山も二等三角点とのことである。なぜ一等ではないのか。45Km間隔が災いしたのか、興味深いところである。いずれにしても三角点の選定には、高さだけではなさそうである。

 興味深いところでは、堺の蘇鉄山。ここには標高わずか6.96mと、全国で最も低い一等三角点がある。そして平成12年(2000)、国土地理院発行の2万5千分の一の地図に山名も記された。
 蘇鉄山は、幕末に砲台が置かれた所であるが、昭和14年(1939)には、すでに一等三角点が置かれていた。また6月には山開きも行われている。そして地元の山岳会が「蘇鉄山 登山認定書」を発行しているが、「認定書」には、“あなたのロマンチック精神と勇気を称え・・・”とある。

 “遊び心”というか、大阪人の“いちびり精神”と言うか、ここまで発揮できれば、大したものである。そしてまた大阪の天保山の標高は、4.53mで二等三角点とのこと。どちらもその低さを競っている所が面白い。

 ところで河内長野での三角点は、わずかに14ヶ所である。これらを巡る“三角点巡り”が企画出来ないものであろうか。特に四等三角点は、平地にあるものが多く、“集印帳”を作り、スタンプラリー感覚で楽しむ。
いかがであろうか。
 あるいは三角点のある校区の児童に校外学習として“探させる”など、いろいろ企画ができそうである。

(筆者注)
(上)学文峰 三角点
(中)鳩原 三角点
(下)烏帽子 三角点
                     R2・6・9  横山 豊