第三次ポエニ戦争でカルタゴを破壊したローマ帝国の小スキピオ(前185~前129)は、そのカルタゴが燃え上がり滅亡していく様子を見て、次のように言ったと伝えられている。
『アッシリアは、すでに滅び、ペルシャ、マケドニアも滅びた。そして今、カルタゴも炎上しつつある。次に来たらんは、ローマか』と。
そして小スキピオの予言の通り、西ローマ帝国も476年に滅亡してしまった。
今ヨーロッパで「PIIGS」と呼ばれる国々の財政が破綻状態にある。ちなみにPIIGSとは、P(ポルトガル)、I(イタリア)、I(アイルランド)、G(ギリシャ)、S(スペイン)を指している。
これらの国々を小スキピオ風に表現すると、次のように言えるのではないか。
「ギリシャ、ローマ(イタリア)はすでに無く、今ポルトガル、スペインが滅びようとしている。次に来たらんは、イギリス、フランス、ドイツか」と。
ギリシャ、ローマ(イタリア)は、ヨーロッパの文明を創造した国であり、ポルトガル、スペインは、大航海時代を切り開いた国々。そしてイギリス、フランス、ドイツは、その後、世界の植民地帝国になった国々である。
振り返って、我が日本もこの第三のグループに属する国の一つであるが、「次に来たらん国」にならないようにしていかなければならない。
今や、国家にとって最も重要なものは「戦力よりも国家の財政力」である。財政力がある国こそ、強国になっていくことができるのである。
未だに「強大な戦力を保持していることこそ強国である」と勘違いし、錯覚している人たちが多くいるが、そのような考えは、第二次世界大戦までの考えであろう。
今後は「国家財政が安定した国、財政力のある国こそ強国」と認識すべきである。そして日本は、そのような国家を目指していくべきである。
(九十九 肇)