JR大阪環状線に乗ると、発車メロディーが聞こえてくる。
発車メロディーは、鉄道駅において列車が発車することを知らせるための音楽であるが、列車の接近や通過を知らせる“接近メロディー”もある。
発車メロディーは、昭和46年(1971)京阪電鉄が導入したのがその始まりとされている。
ところで環状線の発車メロディーは、駅ごとに異なっている。それまで発車の“ベル”しかなかった環状線で発車メロディーが流れるようになったのは、平成25年(2013)からであるが、その選曲が粋!!
南海沿線の我ら住民にしたら、お馴染みの駅は、やはり新今宮駅。そこで流れているのがドヴォルザークの「交響曲第9番~新世界より」。何とピッタリの曲か。通天閣と新世界。切っても切れない。それでは、ほかの駅では、どんな曲が流れているのであろうか。
大阪駅が「やっぱ好きやねん」、大阪城公園が「法螺貝(ほらがい)」、今宮駅が「大黒様」で“えべっさん”ではない。ちなみに“えべっさん”なんて歌はないのだろうか。このように環状線の19駅全てに曲が決まっているが、流れてくる歌に何となく納得する。
ちなみに関西の私鉄では、近鉄も京阪も、そして阪急、阪神も、さらに泉北高速の和泉中央駅や光明池駅でも、あるいは地下鉄でも発車メロディーが流れる。しかし南海電鉄のみ、未だに発車メロディーが流れてこない。
それならば我らが南海・高野線の、しかも河内長野市内の駅では、どのような発車メロディーを流すと良いのか。そこで筆者が独断と偏見、そして好き嫌いと、さらに色眼鏡を掛けて選曲してみた。
なお、これらの曲を南海電鉄が採用しようが、しまいが全く感知しない。ただただ遊び心をくすぐられて満足したいためだけに選んでいる。
なお発車メロディーは、通勤や通学の人たちが行き帰りに聞いて気持ち良くならないといけないし、心ときめき、心ウキウキしてこなくてはならない。歌を聴いて気分が沈み落ち込むようではダメ。聞いていて元気が湧いてこなければ意味がない。今日もガンバロウ、今日も頑張った、明日も!! でなくてはならない。
なお選曲するには、いろいろなジャンルから選曲したいが、まず思い浮かぶのが、“童謡・唱歌系”や“クラシック系”、そして“歌謡曲系”や“民謡系”、さらに駅の所在地の“市町村の歌(市歌)系”、さらにまた“応援歌系”などもあろうか。
さあ、それでは曲を選んでいこう。
まず千代田駅は、「世界かんがい施設遺産」の認定を受けたいほどの池「寺ヶ池」がある。そこで選曲した歌は、文部省唱歌の“池の鯉”。誰もが知っていて懐かしい歌。誰もが口ずさめる歌で、歌うと元気になってくる。
次に河内長野駅前は、東西の高野街道が合流する地であり、付近には錦渓大仏や長野神社の松明立ての神事が今も行われている。さてさて、いかがしたものか。いっそのこと「河内長野市市民歌」でも選定するか。当市を代表する駅でもあるし、我々市民も「市民歌」を聴いたことがない。しかし駅前でいつも流れていれば市民も当市にもっともっと親しみを持ち、愛着が湧いてくるのではないだろうか。
♪♪♭仰げ金剛 むすべ石川 姿けだかく 流れ清らに われらは誇る この山この川♪♪♯ (河内長野市市民歌より)
三日市町駅は、江戸時代、宿場であった。そこで“旅”をテーマに「遠くへ行きたい」や、イングランド民謡の「埴生(はにゅう)の宿」などいかがであろうか。ちなみに「埴生の宿」の意味するところは、旅の宿ではなく、粗末な家の意であるが・・・。
美加の台駅は、電鉄の駅としては一番新しい駅。
この駅のそばの廃線道には、春、サクラが満開になり見事な桜のトンネルができる。そして初夏には、興禅寺の蓮池が美しく彩られる。発車メロディーは、チャイコフスキーの「くるみ割り人形~花のワルツ」で決定。特にワルツは、踊りの音楽であるから聴くとウキウキしてくる。思わず踊りたくなる曲、それがワルツである。
千早口駅周辺には、美しい田園が広がり、その中を電車が走っている。のどかな田園風景が楽しめる所である。
発車メロディーは、ベートーベンの「交響曲第6番 田園」で決まり。この曲が流れてくると、春の野の道を足元も軽やかに、そして心も弾んでくる。
天見の地は、山が迫りその間から空(天)が見える所なので“天見”と呼ばれるとか。
駅前から西の流谷(ながれだに)に入っていくと美しい景色が広がっている。 初春、八幡神社では縄掛け神事が行われ、さらに西に進むと“蝋梅(ろうばい)の里”や“山茱萸(さんんしゅゆ)の里”が我々を迎えてくれる。そして早春の蝋梅、お彼岸の花と言われる山茱萸が我々に春の訪れを知らせてくれる。
天見駅の発車メロディーは、ヨハン・シュトラウス二世の「春の声」であろうか。
(筆者注)
(上・左)寺ヶ池(千代田駅)
(上・右)金剛山(河内長野駅)
(中・左)三日市宿(三日市町駅)
(中・右)花のトンネル(美加の台駅)
(下・左)田園風景(千早口駅)
(下・右)蝋梅の里(天見駅)
R2・8・15 横山 豊