河内長野市内の寺院32ヶ寺の内、真言宗が16ケ寺(50%)、融通念仏宗が6ケ寺(25%)で、残りの25%をそれぞれの宗派が占めている。この宗派の中の一つに真言律宗がある。
真言律宗は、高祖を弘法大師・空海に、また西大寺の興正菩薩叡尊(えいぞん)を中興の祖として仰いでいる。
そして真言密教の教義を旨とし、また南都六宗の一つ・律宗精神の再興も図っていたようである。
松林寺は、河内長野市内で唯一の真言律宗の寺院で、この寺の境内に花海棠(はなかいどう)が咲く。
海棠には大きな実のなる「実海棠(みかいどう)」と美しい花が咲く「花海棠」がある。
花は長い花柄の先に紅色の蕾を付け、開花すると淡いピンク色になり、花は下向きに次々と咲いていく。
霧のような春雨の中、美人が雨に濡れ打ちしおれている姿、あるいは可憐なようす、そしてまた、美人の妖艶な姿は、いずれも海棠の花に例えられ、「海棠の雨をおびたる風情」と形容されてきた。
この言葉は、もともと福内鬼外(平賀源内)が著した人形浄瑠璃『神霊矢口渡(しんれい やぐちのわたし)』で語られた。しかしその「雨をおびたる風情」が、いつの間にか原典の言葉から離れて独り歩きし「雨に濡れたる風情」などと言われている。
なお、河内長野市内では、奥河内さくら公園(元・長野遊園地跡)の回廊の側でもこの花海棠が楽しめる。
西風狂散人(かわちのふうきょうさんじん)