外環(国道170号線)は、河内長野市の西を貫き関西空港に向かって走っているが、上原(うわはら)で国道371号線を分岐する。
分岐されたバイパスは「かつらぎ跨道橋」「町井大橋」「野間里跨道橋」の三つの橋が一本の橋のように繋がって和歌山県の橋本に通じている。
この野間里(のまり)の跨道橋と高向南(楠ヶ丘入口)との間に5月の初め、桐の花が咲く。
桐の花は、枝の先に筒状の淡い紫色の花を付け、甘ったるい芳香を放つ。切るとすぐに芽が出て生長するので「切る」が「きり(桐)」の語源になったという説もある。そして生長が早いので、我が国では女の子が生まれると桐の苗を植え、結婚する時に、その桐の木で嫁入り道具の箪笥を作ったと伝えられている。
また種は風によく乗り、しかも発芽率が高いので河内長野市内でも野生の桐の木をよく見かけるし、5月の連休頃、寺池公園の菖蒲池付近でも楽しむことができる。
桐の木は、国内で最も軽く、割れや狂いが少ない。しかも湿気を通さず、火にも強い。さらに仕上がると光沢があって美しい。そのため箪笥などの高級家具に、あるいは琴をはじめ多くの楽器の材料として、さらに焼き物や軸の箱にも用いられてきた。桐の木には、何か高貴なイメージがする。
『枕草子』第44段「木の花は」には、次のような記述がある。
「桐の花、紫に咲きたるは、なほをかしきを、葉のひろごりざまうたてあれども、また、こと木どもとひとしう言ふべきにあらず。唐土には“ことごとしき名つきたる鳥”の、選りてこれにしもゐるらむ、いみじう心ことなり。まして琴に作りて、さまざまに鳴る音の出で来るなど、をかしなど、世の常に言ふべくやはある。いみじうこそはめでたけれ。」
要約すると「桐の花が紫色に咲いているのは情緒がある。葉の広がりかたはイヤだが、他の木々と同列に論ずべきでない。中国では“鳳凰”と言う大袈裟な名が付いた鳥がこの桐の木に棲むそうで、格別な気がする。琴などの弦楽器を作っていろいろな音が鳴るのは面白いと世間一般の言葉で言うことができるだろうか。いやできようはずがない。非常に素晴らしいことだ」と。
西風狂散人(かわちのふうきょうさんじん)