無患子(むくろじ)って、何に? 奥河内のどこに??

「無患子」と書いて「むくろじ」と読むが、この字にふり仮名が打たれていなければ、まず読めない。
無患子(むくろじ)は、「患いの無い子」「子に患は無い」「子が患わない」の意と解され、縁起が良く、さらに、「患いを無くす」ということで、「無病息災」「魔除け」のご利益があると信じられてきた。
面白い話もある。昔、この無患子の木で作った棒で鬼を退治したので、鬼を追い払い「患いを無くす」木とも伝えられている。
学名は、sapindus mukurossi(サピンダス ムクロジ)といい、ラテン語のsapo indicus(インドの石鹸)が語源と言われている。
5~6月ごろ花が咲き、秋、実が成る。実は球形で緑から茶色に変わり、さらに熟くすと、果皮は艶のある黄褐色の半透明になる。この中に8mmほどの大きさの丸くて黒い種子が一個だけ入っている。
この種子はとても堅くよく弾む。そのため、「羽根突き」の羽根の玉、羽根の錘に使われている。
なお羽子板と無患子でできた羽根とは、無病息災のお守りでもある。また無患子の種子だけでつくられたお守りも寺社で見られる。
お釈迦様は、無患子の実を108粒、糸で貫き通して輪を作り、それを一つ繰るごとに経を唱えなさいと教えたと伝えられている。そのため、無患子でできた数珠もある。
さらにこれを簡略化した腕輪念珠もある。
10個の無患子の両端に二天珠(にてんだま)を入れ、さらに無患子を3個づつ挟み、中央に親玉(おやだま)を入れたものもある。これはブレスレットとして用いられアクセサリーの要素が強い。
果皮は、サポニンという洗浄成分を含み、皮を擦り合せると泡立つので石鹸の代用として、あるいは果実の皮を砕いて布袋に入れ、洗剤として用いられてきた。
なおシャボンの語源は、サポニンからと言われている。
このように無患子は、「患いの無い子」の意から、その玉が「お守り」や「数珠」に、あるいは魔除けとしての「羽根突きの羽根の玉」として、さらにその果実は「洗剤・石鹸の代用」として使われてきた。
また、この果皮は、「延命皮(えんめいひ)」と言い漢方薬の原料にもなっている。
河内長野では、無患子は、松ヶ丘の春日神社境内と日野の臨泉庵でたくさん見られる。

西風狂散人(かわちのふうきょうさんじん)