歓喜天、奥河内の松林寺で抱き合う 【奥河内 神仏 見楽記】

歓喜天松林寺に歓喜天(かんぎてん)が祀られている。愛称は、聖天(しょうてん)様とお呼びする。
この仏様の本籍は、大聖天 歓喜 双身 毘那夜迦法(だいしょうてん かんぎ そうしん びなやか ほう)と言い、ご出身は、インドのシヴァ神の子で、韋駄天(いだてん)のお兄さんにあたられる。         
特技は、夫婦和合、子授けの神、除災招福、富貴の神と多彩。
そしてそれを裏付けるように、象頭人身の二天が抱擁している御姿の仏様である。なお二天像は、二人で一体と考えられている。
なぜそのようなお姿になったかと言うと、悪行を重ねる牡(オス)象(男性象)がいたが、その悪行を見かねた十一面観音菩薩は、大慈悲心から牝(メス)象(女性象)に変身されて、牡象に近づき、改心させたという。そしてその牡象が再び悪行に走らないように、自らの足の親指で牡象の足を押さえつけているためである。なお頭に宝冠を戴いている方が観音様の化身である。
歓喜天
人間は、欲望を抑えることによって悟りに導かれ、幸福が得られると一般的に説かれる。
しかし密教の教えでは、むしろ人間の欲望を抑えず、それを肯定し認めることによって、悟りが開かれ、幸福が得られると説き、牡象のような悪神でも善神に改宗すると考えているようである。 

この仏様は、秘仏で、何時も厨子の中におられる。
そのため御開帳はない。仮にご開帳があっても、この仏様を淫らな目で見るとダメ、アカン、祟りがあると言われている。
しかし我ら凡人、御開帳があると、ついつい淫らな目で見てしまいそうであるが、祟りは御免蒙りたい。でも年に一度ぐらいは、拝ませてもらいたいものである。
ただ筆者も一度だけ当寺とは異なった所で見たことがある。勿論、淫らな心などではありませんぞ!! 念のため。
ところで松林寺の寺紋は、竜胆車紋(りんどうくるま紋)であるが、この歓喜天の象徴は、なぜか巾着袋(砂金袋)と大根である。大根が絡まった姿から大根が象徴であることは何となく判るような気がするが、巾着袋がなぜ象徴になっているのか理解できない。
ちなみに龍泉寺(富田林市)の聖天堂の線香立ても、この巾着袋の形になっていたと記憶する。
また松林寺の歓喜天堂では、堂前に「鳥居」こそないが、「注連縄」と「狛犬」がいて、歓喜天は、まるで神社の祭神のように扱われている。なぜ? 疑問は深まる。そしてなぞは解けない。残念!!

歓喜天 歓喜天

なお歓喜天は、当松林寺のほか、生駒の宝山寺、通称・生駒の聖天さんが特に有名であるが、ほかの寺院でも抱き合っておられると推察、いや妄想する。(H25・11・16 見楽)

                           楠菊亭梅光(なんぎくてい ばいこう)