河内長野のクロスワード『花・花樹・解説編』

 河内長野は、山青く、水清らかな地である。
この地では、古来より幾多の歴史が刻まれ、多くの文化遺産や史跡が残された。そしてそれらに
ゆかりの人たちが、その名を当地に留めている。
当地を散策すると、これら多くの史跡や文化財が、我々を待っているし、これらに関わった人々との出会いもある。クロスワードを解いて知的な世界に遊べましたか。史跡や文化財にあふれた河内
長野を探訪したいと思われましたか。

R4(‘22)・3・31  横山 豊

 

【タテの解説】
1:芙蓉(フヨウ)は、“芙蓉の顔(かんばせ)”とか、“芙蓉のマナジリ”など、美人の顔や美し
い目元の例えとして表現される花である。
2:紫陽花(アジサイ)は、淡青色から淡紅色へと花の色が変わるので別名“七変化”と
も呼ばれ、長野公園や河合寺で6月中旬、その群落が見られる。ところでこの花、お滝さんと
シーボルトのロマンスで有名で、シーボルトは、愛妾のお滝さんの名前にちなんで学名の一部
に“オタクサ・otaksa”と名付けようとしたことで知られている。
4:初夏に桃色の花を付ける笹百合(ササユリ)は、滝のある勝光寺の境内に自生している。
5:小山田のブランドになっている桃(モモ)は、4月、淡紅色の花が咲き、実は“魔除け”
効果があると考えられ棟瓦に取り付けられている。なお実を結ぶ年月の代表として“桃栗三年”と言うことわざがある。
7:黒文字(クロモジ)は、茶道で菓子に添えて出される楊枝。つまようじの別名。河内長野の
特産で岩湧山周辺で自生している。
8:流谷の谷筋の奥では、1月~2月ごろ黄色い花が“心地よい香り”、“人を悩ます香り”を放
つ蝋梅(ロウバイ)であふれていて、ここは“ロウバイの里”と呼ばれている。
10:山茱萸(サンシュユ)は、3月20日頃満開になるので“お彼岸の花”と言われ、流谷の
“サンシュユの里”で黄色い花を楽しむことができる。なお♭稗つき節♯で歌われる“山椒“は、当地で美しい花を咲かせるサンシュユとは別のもの。
12:梅は、“松・竹”と共におめでたい木とされ、美しいものが並んでいる例えに“梅と桜”とか、取り合いのいい例えに“梅に鶯”などとも言われ、観心寺にその梅林がある。
13:榧(カヤ)は、雌雄異株で大木に成長し、木材は碁盤や将棋盤に活用される。長野神社の榧
の木は、府指定の天然記念物で、女木。そのため御幾つになられたかは不詳。
14:与謝野晶子は、風に吹かれてヒラヒラと舞う銀杏(イチョウ)の葉を“金色のちひさき鳥のかたちして”と小鳥に例えて詠ったが、筆者は黄色い蝶が舞っているように見えるのでこの葉を“黄蝶”と書いて“イチョウ”と読んでいる。流谷の八幡神社の黄蝶は、府の天然記念物、長野神社や盛松寺の黄蝶は、河内長野市の保護樹木に指定されているが、いずれも“生きている化石”でもある。
15:花言葉(コトバ)は、それぞれの花に、象徴的な意味を付けたもので、“バラは愛情や美”、“百合は純粋”など、贈られた花の意味するところを読み解くのも楽しい遊びかもしれない。

16:樟(クス)の木は、古くから神社に植えられ巨木となって、御神木として信仰の対象となったものもある。樟脳が採れる香木で、古代にはこの木で仏像が彫られた。河内長野の“市の木”になっている。
17:棚田(タナダ)は、急な斜面に階段状に作られた田。ダンダン畑とも言われ、人類が構築
した景観である。令和4年2月、惣代の棚田は“つなぐ棚田遺産”に認定された。
18:杉(スギ)は、日本の特産で木目がまっすぐ通り香りがあるので樽材などに活用されている。
流谷の八幡神社には、ご神体を迎えたと伝わる勧請杉があり、毎年1月、勧請縄かけ神事が行われている。
19:樒(シキビ)は、花も葉も茎も、さらに根も、全て毒。猛毒の木で、秋には星型の実を結ぶが、毒はこの実に多く、そのため果実は植物として唯一「毒物及び劇物取締法」により劇物に指定されている。このようにスゴイ木が松林寺に植えられているが、木篇に佛とも書かれる(梻)ので、仏教界ではもともと神聖な木と考えられていたようである。
20:5月頃、紫色の蝶形の花が垂れ下がり優美な花がそよ風に揺れている藤(フジ)の姿は美
しい。家紋では“下がる”、“垂れる”は家運の衰運につながると嫌われて“上り藤”と言われている。
23:花占い(ウラナイ)は、花弁を一枚ずつむしり取りながら“好き・嫌い”などの選択肢を連
呼してその選択肢の一つを決めるもので、未来を知るために花を使って行われる予言である。
27:薄(ススキ)は、山野に群生し、茎の先に大きな花穂を付けるが、これは“尾花”と言われ、秋の七草の一つ。葉や茎は、屋根を葺く材料に用いられ、榧(かや)とも呼ばれる。岩湧山のカヤ場は有名。
29:蓮(ハス)は、夏に水面に茎をのばして淡紅の大きな花を付け、根は蓮根。盛松寺や興禅寺
では7月下旬、その優雅な花が我々を待っている。
30:花の外側の部分は“ガク”と言われるが、蕾の時はその花を包み護っている。

【ヨコの解説】
1:日本語で“花”、英語で“フラワー”、フランス語では“フルール・fleur”と言う。
2:馬がこの葉を食べると脚がシビレて歩けなくなると言われ、“馬酔木(アセビ)”と書かれるが、まず読めない。早春、白い壺型の花が咲くが有毒。松林寺では樒と共に見られる。
3:蓮華(レンゲ)は、春に長い柄の先に紅紫色の蝶形の花を輪状に付け仏像の蓮華座を思わせ
るが、水田に栽培され田植え前、土に鋤き込まれ肥料にされた。そのため過っては多くの田畑で蓮華の花が満ち溢れていたが、現在では本当に少なくなった。
5:春秋は“春の桜、秋の紅葉”に代表されるが、延命寺には、その秋を代表する空海ゆかりの夕映えの紅葉(モミジ)が今なお我々を楽しませてくれている。
6:無患子(ムクロジ)は、“子に患が無い”と書かれ、果肉にはサポニンを含むことからシャボンの語源となった木で、石鹸の代用品であった。実は羽根つきの羽の玉や数珠として用いられてきた。松ヶ丘の春日神社に見られるが非常に珍しい木である。
9:桜(サクラ)は、日本の国花。葉よりも先に花が咲くソメイヨシノが多くみられ春には“開
花宣言”や“桜前線”、そして花見など、日本中を優雅な美の世界へ誘ってくれる。
11:秋海棠(シュウカイドウ)は、ベゴニアの仲間で9月中旬、岩湧寺の境内がこの花で埋まる。

17:多羅葉(タラヨウ)に切手を貼って投函するとハガキとして使えることから郵便局を代表す
る木と考えられて、長野郵便局や千代田郵便局などに植えられているが、長野神社でも見られ
る。
21:枝は弓なりに垂れ、葉は柳のように細く、春にはその枝に白い花が無数に付き雪が積もったように見える雪柳(ヤナギ)は、寺ヶ池でその群落を見ることができる。
22:日本サッカー協会のシンボルの八咫烏(ヤタガラス)がくわえている葉は、熊野速玉大社に代表される熊野権現の御神木の梛木(ナギ)の葉であるが、この葉は魔除けとなり、また簡単に割けないことから男女の縁が切れないようにと女性がこの葉を鏡や鏡台に隠す習俗があったようで、そのため夫婦円満を代表する葉と考えられている。松林寺でこの木が見られる。
23:紅空木(ウツギ)は、日本原産の木で淡紅色の花を付けるが、茎は空洞。唐久谷四辻の奥に紅空木の群落を見ることができる。
24:梨(ナシ)は、4月、白い花を付け、8月下旬、甘く果汁の多い果実が食せるが、梨の実は弥生時代からすでに食べられていたようである。ところで「ナシ」は「無し」に通じることから庭に植えることを嫌ったり、「有りの実」と言い換えたりされることがある。今、河内長野では小山田の特産品でもある。
25:桜(サクラ)は、種類も多く、金剛寺のシダレ桜、天見の八重桜、長野公園の夜桜、変わったところでは金剛寺に“御衣黄”が咲く。桜前線が北上してくるとウキウキとした気分になる。
26:観心寺で見られる侘助(ワビスケ)は、椿の一種で、茶人に好まれ茶花や庭木として愛でられてきた。
28:卯の花(ウノハナ)は、旧暦の卯月(4月)頃に花を付ける。田植えの時期、タワワに蕾を付けた卯の花の風情に、秋に稲穂がタワワに実った姿を重ね豊作を夢描いた。枕草子にも詠まれているように、この花にホトトギスが飛来すると考えられ、唱歌では ♭卯の花の匂う垣根にホトトギス早も来鳴きて♯ と詠われている。卯の花の群落は、大沢街道で堪能できる。
29:延命寺の花筏(ハナイカダ)は、葉の上に小さな花を付けるが、これを人が筏に乗っている姿に例えられて、こう呼ばれている。
31:彼岸(ヒガン)花は、有毒植物であまりにも赤いので不吉な花と考えられることも多いが、
別名、曼殊沙華(まんじゅしゃげ)とも呼ばれ、この花を見る者は悪行から離れると考えられ
ている天界の花でもある。秋には田畑の土手や畔をにぎわしている
32:樹皮は、灰黒色で円形にハガレた跡が白くなり、これが子鹿の模様に似ていることから鹿子
の木(カゴノキ)と呼ばれ長野神社にある。
33:菊(キク)は、平安時代初めに輸入された花で50円硬貨にデザインされ、河内長野の“市
の花”でもある。9月9日の重陽の節句は、菊の節句とも呼ばれている。

河内長野のクロスワード【花・花樹・カギ編】